「リネージュと私 ━━熱血父子の細腕繁盛記━━」
モーニング娘さくら組
おっぱい二毛作
私とリネージュ(以下リニジ)との出会いは、2ちゃんねる(以下2ch)のラウンジに立っていた「リネージュでラウンジクランツクローウ(・∀・)」というスレッド(以下スレ)だった。残暑厳しい8月下旬、私はTFCというネットゲームで銃弾の雨をすばやくかわし、いたるところに深田恭子や女性器のロゴを貼り付けるという極めて邪悪なプレイをしていた。その鋭さから「北越後の赤い黒豹」と呼ばれ恐れられていたのだが、孤高ゆえの悩みか、「もっと強い漢(おとこ)に会いたい」「空っぽな心を埋める何かが欲しい」と思い、新天地を求めて2chを彷徨っていた。そんなときに見つけてしまったのがリニジである。今考えるとこの出会いは、偶然ではなかったのかもしれない。いや、偶然だったかもしれない。
スレの>>1に従い、覚えたてのIriaを使ってクライアントのダウンロードを開始する。
「ダウンロード完了までにかかる時間 20時間」
DSLや光回線が普及した現在なら300Mという数字はそれほど苦になるものではないが、ISDN全盛の時代に300Mという数字はあまりにも大きい。狂気の沙汰としか言いようのない。今思えばNCJのならず者的運営法はここから始まっていた。しかしこの試練を乗り越えれば、きっと素敵な出会いが待っていると信じ、ISDN回線をフル稼動させた。
慎重派の私はダウンロード中も情報収集を怠らなかった。スレや攻略サイトなどを逐一チェックし、ステータスの振り方やラウンジメンバーの名前、ラウンジクランにおける♀キャラ不足事情などの有用な情報を得ていた。これらを踏まえたうえで「ラウンジクランでチヤホヤされよう計画」を練った。キャラは一番セクシーな♀wizで名前はスレに良く出てくるアレを使う。アレならきっと私を見かけた人はすぐにラウンジャーであると気づくはずだという目論見だった。ただアレをそのまま借用するのも芸がないし品がないので1字変えることにする。そして完成したのが今や都市伝説とまで言われるレアキャラ、後にギランでお買い物キャラとなる「つーかマムコ」だった。
ゲームにログインするとそこは歌う島(以下SI)という、なんとも冴えない土地だった。最近リニジを始めた方には分かるまい、当時の悲惨なSIの姿を。土地は痩せこけ、人もまばらで、悪臭がプンプン漂う町だった。あまりの臭さに戸惑いながらも、とりあえずダウンロード中に集めた情報を頼りに案山子を殴ってレベルを上げることにした。案山子を捜し求めている途中、捨てられているろうそくやレザージャケットは全て拾い集めた。「売れば少しは楽なスタートをきることができるだろう」そんな儚い希望は数分後に脆くも崩れた。落胆しながらも案山子を殴りレベル4まで上げることに成功。魔法書購入資金を貯めるため、案山子殴りをやめ、凶悪なモンスターを倒すべく一人荒野へ向かった。名前のせいで道行く人々から笑われたが、これも計算済みだった。思わずほくそえんだ。
「すげーよあんた!ラウンジの看板wizだ!」「こんな鋭い奴がいたのか!!」などと言われんがため、一人黙々とSIで雑魚どもを狩り、所持金も100アデナに達した。そこで魔法を買う決心をする。値段は全て同じなのでどれを買うか迷ったが、回復にかかる手間と時間を節約するためにヒールを買った。これが大失敗だった。周囲のwizを見ると、皆敵に魔法を当てその後犬に攻撃させている。「エナジーボルトを覚えたほうが狩りの効率が遥かにいい」100アデナと引き換えにひとつ賢くなった。
目から何かをこぼしながら、再び雑魚どもを蹴散らし100アデナを貯め、エナジーボルトを習得する。ここからの戦闘はまさに鬼のようだった。我が物顔でSIを練り歩くオーク戦士や鋭い牙で襲い掛かってくるウルフも倒せるようになり、オーク装備は揃い所持金も貯まる一方。まだ覚えていないレベル1の魔法を覚えたり犬を買ったりと、贅沢の限りを尽くした。そんな中、忘れかけていた彼らに出会ってしまった。
あれは誰だったろう。ぴえとろだったかmasamasaだったか。今となっては思い出せないがラウンジのエンブレムをつけた猛者を偶然見つけてしまった。スレではクランの空きがあと僅かという情報もあり、焦りを感じた私は迷うことなく彼に話しかけた。「クランに空きはあるか」「クランに入れてくれないか」と問うと、彼はクランチャットで盟主アゲーヤに問い合わせてくれた。しかし返ってきた答えは無情にも「空きがない」とのことだった。「つーかマムコ」という名の天使の翼が折れた瞬間だった。失意の中、彼らに別れを告げ再び戦場へ向かうが、涙でモニタが見えなくなったのでログアウトし、クランに空きが出るのを待つか、クライアントをアンインストールするか悩んだ。
どれくらい悩んだだろう。7分だったか2日だったか。何か答えを求めてスレを覗いてみると、そこには新しいムーブメントが沸き起こっていた。ラウンジクランが満員なのでセカンドクランを作らないかというものである。しかし盟主は戦闘能力が非常に低く、誰もやりたがらない。誰しもが救世主の降臨を待ちわびていた。「翼は折れても歩けるのならまだ道はあるじゃないか!」モチベーションが上がってきた私に更なる幸運が訪れた。スレに書き込まれたKickthの「今プリになるとプレゼントがあります(ワラ)」という、現在ではとても書けないような恥ずかしいレス。これを見た私は即座にリニジを起動した。
「プリンセスの攻撃を受けたときの声がたまらない」というレスがあったのを思い出し、チヤホヤされるために迷わずプリンセスを選択した私は、CHA18になるまでさいころを振り続けた。最近始めた方にはわかるまい、当時のさいころ式ステータス振りの辛さを。振っても振ってもなかなか理想のステータスにはならない。CHA18で残りのポイントは全てSTRというのが私の理想だったが、他の誰かに救世主の座を奪われては元も子もないのでとりあえずCHA18、後は適当のプリンセスを作った。名前はもちろんアレを1文字弄るだけ。こうして「つーかマソコ」が誕生した。
「女神降臨!」「つーかマソコのクランに入りたい」など多数の賛美の声に励まされ、kickthに見返りを要求しつつクラン設立に向けレベルを上げた。つーかマソコの戦闘能力はつーかマムコに比べ格段に低い。であるにもかかわらずレベル上げが全く苦にならない。一人で戦うのと人々の期待を背負って戦うのではモチベーションが違う。気が付けばクラン設立可能なレベルに達していた。私は即座にクラン作成コマンドを打った。ラウンジ発祥クランであると分かりやすくするため、そして私の偉業を後世に残すためにクラン名は「つーかラウンジ」に決まった。
後日kickthから渡されたプレゼントはシルバーソードやドーベルマンの首輪など、店には売ってないものばかりだった。感謝の気持ちとともにシルバーソードを装備し、犬には「つーか大陰唇」「つーか小陰唇」「つーか陰核」と名前を付け可愛がった。きっとラウンジクランの人たちが私のために苦労して入手してくれたんだと思い大事に使ったが、そんなにレアなものではないと気が付くのにそう時間はかからなかった。
時同じくして2chでは大変なことが起こっていた。ラウンジが閉鎖されてしまったのである。結局は10日ほどで復活することになるがこの間ラウンジリネージュの舞台はラウンジ避難所へと移されることになった。クラン設立早々縁起が悪いなと思いつつ、初MMORPGの醍醐味を感じていた。この当時のメンバーは教えて君に優しいEternalClaraや、句読点を使わないInformer、後にJAらうんじの大黒柱となるGuhuhuなど非常に印象深い面々である。
SIから追い出されるレベルになり、私は活動拠点を話せる島(以下TI)に移した。犬小屋を利用するために何度か訪れたことはあったが、それはそれは恐ろしい街だった。最近始めた方には分かるまい、あの恐怖が。犬を引き出せば即座にイラプションが容赦なく飛んでくる。街の中でボーっとしているとバグベアーがあたりを凄惨な血の海に変える。
こんな街で生きていくには強さが必要だと思い、初心者の憧れ、骨セット購入を考えた。3点セットで買えれば都合が良かったのだがこの日は不運にもバラ売りしかなく、それでもいいやと盾と鎧を購入、残すは兜のみとなった。そんなとき、全体チャットで「骨兜売ります」というメッセージが流れた。即アポをとると、シルバーナイトタウン(以下SKT)まで来てくれとのこと。私は一度も行ったことがない街だったが、当時クラン員だったホゲバiタがSKTまでの道順を知っているというので彼に道案内を頼んだ。
テレポート、テレポート、そしてまたテレポート。何度かテレポートを繰り返しているうちに目的のSKTにたどり着くことができた。そして骨兜を売ってくれる人もすぐに見つけることができた。しかしここで問題が発生した。テレポート代がかさんで骨兜の代金が払えなくなってしまった。何とか工面すべく倉庫を覗くと、ゴーレムから奪った最高級ルビーがある。TIの店では買い取ってくれないのでどれほどの価値があるものか分からなかったが試しにルビー払いは可能か尋ねたところ、快諾してくれたのでなんとか骨兜を入手することができた。高い買い物だった。
それから間もなく運命の出会いが訪れた。隠された渓谷で狩りをしていたguhuhuからJ2なる人物が入団したがっているという連絡が入った。クラン拡大のため、そして私の名声のためにもここは迎えに行かねば、とSKTで待ち合わせする。Join作業をサクサク済ませ、どこからともなく飛んできたハーピーに固められつついろいろと話をしていると、J2の口から「ラウンジクランに女の子はいますか?」という質問が飛び出した。私はクラン員の性別は聞いたことがなかったので分からないと答え、なぜそのようなことを聞くのかと尋ねると、自分は女性なので、同姓がいたほうがいいと言う。ここで私は遅ればせながら気が付いた、リニジをやっているのは男性だけではないことを。この日を境に私の心の中にある助平という名の悪魔が覚醒した。
9月に入りすでにクラン人数は2桁になっていた。私のレベルは15に達し、盟主の試練に挑戦してみようかという色気が出てくる。試練を受けるためにはクラン員が5人必要で、その内容は明らかではない。ひょっとしたら危険なものかもしれない。その旨をクラン員に告げると、私のために協力したいという5人の猛者がTIに終結してくれた。私はこんなにも愛されているんだなと感動しながら、一路グンダーの住処へ向かった。
薄暗い穴の奥の奥へ進むとグンダーとその取り巻き連中が佇んでいた。自分に気合いを入れ直し、さあ行くぞとグンダーをクリックすると、何やら長文を話し出した。いよいよ試練が始まるのかと思いきやその長文と共に試練は終了、なんともあっけない幕切れだった。そしてそのままの勢いでグンダーの住処の隣の訓練所でアデナAAを作り始めた。このグダグダ感がいかにもラウンジらしいと思った。
私がリニジを始めてはや2週間、この時期には刺激的な事件が起こり始める。まずはラウンジ板で華々しい活躍を見せていた「アイツと俺とリッケンバッカー」(以下リッケン)のリニジ参入表明である。ラウンジ板で彼の活躍を目の当たりにし、彼を心の師と仰いでいた私にとって彼の参入宣言は、嬉しいと同時に主役の座を奪われるかもしれないという一抹の不安を生み出した。
2つ目は「司会者」ことジョカによるラウンジ漁団設立。リニジの世界へ足を踏み入れたばかりのリッケンが入団しただけでなく、ファーストクラン、つーかラウンジからも数人が移籍する。若干寂しさがあったが、スレの活性化のためにもと思い引きとめはしなかった。ラウンジ漁団の活動内容についてはジョカサイトに詳しくまとめてあるのでここでは触れないでおく。
3つ目は落ち武者の台頭。アグネス・ラムの話に夢中になり、うっかり犬にエサを与えるのを忘れて野生化させてしまったり、普通に店で売っている矢を1万本も人から買って大はしゃぎするなど、かなり電波な行動をし始めた。彼のとる行動そのものが素晴らしいネタだったので、スレやクランチャットで報告すると多大な笑いが巻き起こり、後に落ち武者という名前は電波の代名詞となる。
ラウンジ板も元通り書き込めるようになると、ラウンジ板=本スレ、避難所=こっそりスレのような形でしばらく続くことになる。そんな中、本スレに少しずつ黒い影がちらつき始めた。我々ラウンジ勢が初心者ゾーンを抜け出し注目を浴び始めると、2chネトゲ板クランの盟主ぱんたんを筆頭にネトゲ板からの流入者が増え、スレが荒れてきた。何とかスレを平穏な状態に戻そうと、「つーかマンコ」と書いたり、今では考えられないほど恥ずかしいギャグを交えたクラン員募集カキコを書いたり、ゲーム内ではぱんたんから来るウィスパーに丁寧に答えたりしていた。しかしスレには相変わらず陰湿なレスが相次ぎ、しばらく収まることはなかった。
ゲーム内でも不愉快な事件が起こる。つーかラウンジが初心者歓迎クランであるのをいいことに、初心者の振りをして入団し、クラン倉庫にあるものを盗んで去っていく「倉庫泥棒」である。2度ほど被害に遭ったところで、なんとか対処せねばと思いついたのが合言葉制入団法。ウィスパーで「(●´ー`●)
なっちありがとう」と言わなければ入団許可しないというものである。もし合言葉を言えればスレを見ている=ラウンジャであるという証拠になる。我ながら名案だと思ったが結局は合言葉を言って来る人が少なかったので、盗まれそうなアイテムは全て私の個人倉庫で保管することにし、合言葉制はすぐに廃止となった。
ちょうどこの頃、ラウンジクラン同士で交流を深めるために、模擬戦でもしてみないかという話が持ち上がっていた。ファーストクランはレベルが高すぎるので今回は観戦ということで、つーかラウンジVSラウンジ漁団というカードに決まった。あくまで交流のための模擬戦であり勝ち負けは関係なかったが、やはり戦うからには勝ちたい。レベルも人数もこちらのほうが明らかに上だったがひとつだけ不安な点があった。ジョカが何か秘策を練っているというのである。全員ダイスダガーを装備して決死の特攻をしてくるのではないか、ファーストクランから(・∀・)を引き抜いてくるのではないかなどいろいろな憶測が流れたが、どんな奇襲にも対処できるよう私はハイペースでレベルを上げることにした。Informerの献身的な補助魔法のおかげでサクサクレベルも上がり、試合当日までにレベル20に到達した。
試合時間が近づくと、TIのコンバットゾーンに3つのラウンジクランが集合した。ジョカが引き連れてきたのは落ち武者、きんたまん、コレクター。なぜかリッケンは「ジョカぶっ殺す」と言いながらつーかラウンジに来た。これで人数的にもかなり優位になったが、余裕綽綽のジョカを見ると余程の秘策があるに違いないと感じた。その秘策が何なのか考えるが時間は待ってはくれない。戦争申し込みコマンドを打ち、両軍コンバットゾーンの中に入り、スタートの合図を待った。観戦のファーストクランの者がカウントダウンを開始する。5,4,3,2,1、そして運命の戦争開始。さあ殺るぞと気合いを入れた瞬間漁団のメンバーが目の前から忽然と消えた。一瞬の静寂の後、「あいつら逃げやがった」「これが秘策だったのか」などと怒号と罵声が飛び交った。そして私の元に一通の手紙が届く。
前略
みんなは今どうしていますか。
SKTは今とてもいい天気です。
(翻訳:戸田奈津子)
どう足掻いても勝てないと踏んで、せめて笑いを取ろうと道化を演じたらしい。この後ナタクという名のプリンスが2人のプリンスを引き連れてその場に現れるが、その正体はジョカ、落ち武者、きんたまんの3人であることは火を見るより明らかで、彼らがコンバットゾーンに入るなりその場にいた全てのラウンジャーにタコ殴りにされていた。つーかラウンジはおろか、観戦していたファーストクランまでも唖然とさせたこの行動。笑う人、怒る人、反応は人それぞれだったが私の個人的な観点では素晴らしいネタだったと拍手を送りたい。
漁団がいなくなり残されたつーかラウンジとファーストクランは、盛り上げたテンションを鎮めるため、やり場のない怒りをぶつけるためにそのままコンバットゾーンで交戦することにした。始める前から勝負は見えていたが、我々は胸を借りるつもりで戦いを挑んだ。何度も殺されたがそれでも目いっぱい楽しんだ。
楽しいときもつかの間、あれを落としたこれを落としたという報告がちらほら出てくる。コンバットゾーンでは死んでもアイテムを落とさないと聞いていた私は不思議でしょうがなかった。漁団との戦争状態を解除していなかったのが原因だったのだろうか、真相は未だに分からないが、+4Tシャツを落として凹んでいたguhuhuには「残念だったな」と一言声をかけ、私のお気に入りだったJ2には私が使う予定で作っておいた新品のTシャツを格安の20kで譲った。私のミツグ君人生の始まりだった。
いろいろハプニングはあったが各ラウンジクランの距離は確実に縮み、交流会は目的を果たせた。しかし、3クランでこれからも切磋琢磨して行こうという私の理想とは別にジョカ、アゲーヤの両盟主にはそれぞれの考えがあった。この試合のためにプレイしていただけで、これ以上リネを続ける気はないと言い放ったジョカはこの数日後地獄へ行き、そのまま引退。漁団は事実上解散となり、残された走り屋たちはつーかラウンジで引き受けることになる。
アゲーヤもまた、数日後に学業に専念したいという、某アイドルと同じ理由でリニジを引退するという衝撃的な発表をした。私は引き止めようとしたが、それにより彼の人生に影響を与えてはいけないと思いとどまり、合併を受け入れた。そして冷静に今後のラウンジクランについて語った。いつ解散するか、クラン員はどうするかなどを話し合い、幽霊部員の排除も兼ねて一度両クランとも解散し、新しく私がクランを設立することに決まった。
合併が決定し、私は慌しく準備をしていると、グルーディンにてInformerがMasayuk1なる人物と揉めていた。Informer曰く、彼はぱんたんらしい。確かに彼のキチガイ染みた言動を見ると間違いなくぱんたんだった。私を含めほぼ全員のラウンジャは、ぱんたんがどこにいようが何を言おうが気にしなかったが、Informerだけは違った。ラウンジ固定としてスレを荒らされた恨みなのか、ただの煽り好きなのか、彼だけは執拗にぱんたんを煽り続けた。そしてついに怒りが頂点に達したぱんたんがつーかラウンジに戦争を申し込んできた。その旨をクランチャットで伝えると、「受けて立て!」「2nd最後の打ち上げ花火だ!」などと盛り上がっていたので私は戦争を受けた。
両軍グルーディンに集い、我々ラウンジ勢は町の中、ぱんたん一味は町の外に陣を取る。その間私は場を和ませ、抗争を避けようとキングバグベアーに変身したが、Informerが誤字脱字だらけの稚拙な文章でぱんたんを煽り続ける。こっちが恥ずかしくなるようなレベルの低い文章だった。当時ぱんたん一味は我々とは比べ物にならないほどレベルも高く、装備も充実していて、まともにやりあっても勝ち目はなかった。ラウンジ勢で唯一対抗できそうなのはぃぃのみ。ぱんたん一味もグルーディンのガードを警戒し、我々に切りかかってくることはなかった。さてどうしたものかとクランチャットで相談するもなかなか解決策は見当たらず、にらみ合いは数時間続いた。しかし、にらみ合いすぎて日没と共に戦争は終了してしまった。
ここからは互いに冷静になり話し合いになる。ぱんたんの主張はInformerをつーかラウンジからBANしろというもの。私は仲間をBANすることはできないと申し出を断ったが、彼は「InformerをBANし、二度とつーかラウンジに入団させない」という誓約書を渡せば5k支払う、という取引を持ちかけてきた。私はその条件を飲むことにした。InformerをBANし誓約書を書いて渡すと、彼は喜んでお金を私にくれた。Informerとの戦いに勝ったと思いこみ子供のようにはしゃぐ彼に、私は告げた。
「つーかラウンジは実は明日解散して新しいクランになるんですよ」
我ながらとんちの効いた素晴らしい解決策だった。しばらくは「詐欺だ、金を返せ」とうるさく言われたが、最終的にはぱんたんを囲んで少年マガジンのことなど、たわいない話題でグダグダチャットして終わるという壮絶な結末を迎えた。
翌日、ついにアゲーヤ最後の日を迎える。グルーディンで共に倉庫整理をしながら、なぜか互いの個人的な話になり、私が米国人であることを告げるとアゲーヤは新潟での思い出を語ってくれた。新潟県柏崎市にある「恋人岬」。現在では拉致被害者の蓮池さんが訪れたことで有名になったが当時は全国的にはまだ無名で、そんなところにアゲーヤが訪れたことがあるというのは驚きだった。きっと恋人と行ったのだろうと思ったら、男5人でのむさ苦しい旅だったようだ。
新潟の素晴らしさを語りつくし、新クランの名前でも考えようかという話になると、新潟と言えば米、米と言えば農協、農協=JAということで「JAらうんじ」でどうだろうという割りとあっさりした結論が出た。後にスレでは「各クランの盟主の意思を継ぐという意味で、JOKAのJとAGEYAのAを取ってJAにした」と報告しているが、実際は大方の予想通り農協である。感動的なエピソードがあったほうがスレで報告しやすいのと、各クラン員に「JAらうんじ」というクランを愛して欲しい、誇りを持って欲しいという私なりのとんちの効いた配慮だった。まあこれも嘘八百だが。
合併作業も無事に終了し、アゲーヤがその使命を終えようというころ、誰かがアゲーヤの引退式をやろうと言い出した。JAらうんじ一同はグルーディン左の浜辺に集まり、アゲーヤを囲んで感謝の言葉や労いの言葉をかけていく。深夜にも関わらず総勢20人は集まっただろうか、このことからもアゲーヤが残した偉大な功績、彼の人徳が伺える。記念撮影をしたり、隊列を組んで、花火大会(当時まだ花火というアイテムは存在しなかったので魔法やアイテムのエフェクトで)をしたりと、アゲーヤとの最後の時間をすごした。今思えばアゲーヤと深いところまで話し込んだのはこの日が最初で最後だったかもそれない。出会ってから約1ヶ月、折角打ち解けたというのにそれが別れの場であるという、なんとも無情なインターネットだった。
涙の引退式から一夜明け、総員30名以上の大所帯となったJAらうんじは活動を開始する。エンブレムはまだ決まっておらず、日替わりにして好評だったものを後々採用しようということにした。バタバタした船出だったが、クランチャットやスレでは新旧メンバーがうまくまとまってツアーを企画するなど団結力は一層強まり、盟主の私も誇らしかった。しかしクラン員はこれだけでは満足していなかった。「城を取ろう」という高い理想を唱える者が多く、私もクラン員の期待に応えるために攻城戦可能レベルである25を目指し、日々バグベアーやリザードマンを愛犬と共にタコ殴りにしていた。
私のレベルが25になって間もなく、火田民村付近で狩りをしていたクラン員からクランチャットで報告が入る。「今戦争時間中だけど、オークタウン(以下OT)の門誰も守ってないぞ!」「今なら勝てるぞ、マソコ来い!」そのときのクラン員のログイン数は少なく、私の所持金も僅かだったが、相手はどこの誰かも知らない馬の骨、しかも城門前はがら空きだというではないか。しばらく迷った後、練習を兼ねて攻めてみようと決意し、クラン員にOT集合令をかけた。私もなけなしの金でレッドポーションを20個ほど買いOTへ向かった。
戦争はおろかOTへ行くのも初めてだった私は、迷いながらもなんとか城門前へたどり着いた。大半のクラン員はすでに集結していて、私のGOサインを待っていた。震える手で戦争申し込みをすると、我々の頭上にエンブレムが出現し戦闘態勢に入った。城門には温泉マークのエンブレムをつけたムシケラが数名、これなら突破できると確信した。私は門から少し離れたところで待機し戦況を見守っていると、ほどなくして塔を破壊したとの報告が入る。急いで塔へ向かうと、先ほどまではガラガラだった城門付近にはなぜか多数のナイトがたむろし、その足元にはJAの屈強な猛者の死体が転がっていた。一体何が起こっていたのか、城門を守っていたナイトのエンブレムを見てすぐに理解した。
白地に可愛いチューリップ、当時gangsterと並んで最強最悪と呼ばれていたPINKODATI血盟のメンバーであった。我々がTIでウェアウルフを必死に倒している頃すでにイラブションを撃ち、我々が骨セットを手に入れてはしゃいでいる頃すでにサモンモンスターでバグベアーを呼んで初心者を襲っていたあの鬼畜集団である。こいつらを相手に勝てるのだろうか、迷っていても仕方がないのでとりあえず門突破を試みた。しかし実力差は歴然で私はあっという間に殺された。私の死亡と共にクラン員も諦め次々離脱、火田民村に集まり反省会を開き、JAラウンジ最初のビッグイベントは幕を閉じた。その最中になぜかPINKODATIのメンバーから骨セットをもらう。あれは一体どういう意味だったのか、今となっては知る術はないがラッキーだった。
私の倉庫には未だにファーストクランから受け継いだ遺産が眠っていた。新クランのために使って欲しいと託された貴重な品々をどのように役立てるか、クラン員との協議の結果、クラン内でオークションし、その売上金は何かあったときのためのクラン資金にしようということに決定した。本当は必要としている人に無料で差し上げたいところだが、初心者だけを優遇するわけにはいかない。かといって古参が有利になるのも好ましくないので、相場の半分以下という格安の最低落札価格を設定し、皆に公平に落札チャンスがあるようにした。計画もある程度固まりスレで趣旨を説明すると、「JAではないが参加したい」「転売して儲けてもいいですか」などというたわけ者も若干名いたが概ね好評で、私の元へ次々と入札便箋が届いた。
締め切り時間の午前0時を回り、届いた便箋を1枚1枚チェックしていると、一人しか入札していないのにやたら高値をつけているものや、ほんの数アデナの差で競り負けているものもあり、ゲラゲラ笑いながら帳簿をつけた。全13品中8品が落札、改めて売りに出した残りの商品もすぐに完売、250k近い売り上げを献上した。初めて見る大金に何度も持ち逃げを考えるがそこは断腸の思いでぐっとこらえ、第一回ラウンジ限定オークションは大成功を収めた。
現在では腐れ外道としてすっかり有名になったリニジのゲームマスター(以下GM)だが、奴等が活動を始めたのがちょうどこの時期である。JP鯖開始時からこれまではまだ存在しておらず、我々はやりたい放題暴れていた。しかし「出る杭は打たれる」、これが2chネトゲ板の伝統のようで、満を持してつーかマソコ叩きが始まる。「わんぱくANAL」や「ザーメンマン」など私がつけた至高のタイトルをセクハラがどうのこうの、利用規約がうんたらと否定する。ペニスやワギナが卑猥な言葉の部類に入るなら、医学書や産婦人科医はセクハラ言葉のバーゲンセールではないかと彼らを一喝するが、彼らの邪悪な思念が奴等を目覚めさせた。
私とクラン員数名がSKTに集まり仲睦まじく話をしていると、その中の一人、マンコスキーに突如悪魔の手が伸びた。GMからの警告である。マンコスキーが説教部屋に拉致されたとは露知らず、残された我々は何が起こったのか話し合っていた。数分後、戻ってきたマンコスキーがことの詳細を話してくれた。ある程度想像はできたがやはり「マンコスキーという名前は公共の良俗に反するので名前を変えて欲しい」とのことだった。
私の場合は「マンコ」じゃないから関係ないだろうとという気持ちと、ひょっとしたら私も説教されるのだろうかという気持ちでマンコスキーの話を聞いていたが、突然薄暗い部屋へ強制連行された。ここが説教部屋だとすぐに理解し、クランチャットで拉致されたことを報告していると目の前に「歴史の教科書で見た弥生時代の人」のような格好をしたキャラクターが現れた。これがきっとGMだろうとカーソルを合わせると「JapanGM3」。これは良い記念になるとSSを撮影していると、彼が静かに口を開いた。内容はマンコスキーと同じく名前のこと。いずれGMのほうで不適切なキャラクターの名前を変えられるようなシステムに改善されるので、そのときには名前を変えて欲しいということだった。紳士的で誠実なGMの対応に私は快く承諾した。「lineageを楽しんでくださいね」と言い残すと彼は私をSKTへ送ってくれた。
説教部屋から戻ると、そこには先ほどまで話をしていたクラン員の他にMankoという謎のナイトがいた。私がGMに拉致されたことを知っているあたり、JAらうんじの誰かだったと思うが、その名前から何が目的なのかはすぐ理解できた。NCJの「不適切なキャラクター名」の基準に興味津々な我々は謎のナイトMankoも交え、「つーかマソコの次の名前をどうするか会議」を始めた。「つーか」の部分は何も問題ない、問題は「マソコ」の部分だ。マソコに似た感じでちょっと南仏を感じさせる「マンユ」なんてどうだろう、などと高尚な意見を交わしていると突然チャットウィンドウにJapanGM3からのメッセージが流れる。
[JapanGM3]あまりにも酷いようだとACCOUNT
BANしますよ
(翻訳:戸田奈津子)
我々は震え上がり、スマンカッタと捨て台詞を残し早々に解散した。
余談ではあるが私に「lineageを楽しんでくださいね」と言ったこのGM3は「lineageを楽しみ」すぎて情報漏洩、職務怠慢とされ、数ヵ月後NCJを解雇されることになる。現在の愛想のないGMと比較するとこのGM3やジョカサイトで散々いじられているGM2は話が通じるGMだった。彼らが引き続きGMを続けていれば我々との確執も起こらなかったであろうと考えると本当に惜しい人を亡くしたものである。また、このGM解雇事件が後のJAらうんじにとんでもない災難を引き起こすことになる。
ラウンジ3クランが合併したことにより、常にほぼ満員だったJAらうんじは入部希望者がいてもなかなかクランに空きがなく、たまに引退者が出てもすぐに新しいメンバーが入って満員になってしまうという状態が続いていた。そこで、JAらうんじもセカンドクランを作り、初心者をどんどん取り込もうという案が提出される。私もその案に賛成し、スレでセカンドクランの盟主を引き受けてくれる奇人変人を募集した。
しかし私のときがそうだったように、盟主をやりたがる人はなかなか現れなかった。引退していたジョカが立候補していたが、初心者育成というセカンドクランの目的と彼のプレイスタイルが合わない、彼には独自の道を突き進んで欲しいということで、セカンドクランの盟主ではなく第3のクラン設立を勧め、セカンドクラン盟主の出現を待った。
それから間もなく、猫と名乗る人物がセカンドクランの盟主を引き受けたいと申し出てきた。たまにスレで名前を見る程度でどのような人物かよく分からなかったが、敢えて立候補してくれたのだし、特別おかしい人物でもないように見えたのでセカンドクランをお願いすることにした。
猫から連絡が入り、私を含むJAらうんじメンバー数人が彼の待つTIへ向かい顔合わせをした。名称をどうするか迷っていてまだ血盟は作成していないとのことなので、我々は早速名前決め作業に入った。ラウンジクランだと分かりやすく、それでいてニイガタンジョークを含むブラックな名前ということで、軽い気持ちで「きのこらうん汁なんてどうだろう?」と意見を求めると、そのまま満場一致で「きのこらうん汁」に決定した。
きのこらうん汁血盟の盟主となった猫に、初心者育成のために使ってくれと初心者用の装備などを彼に託すと、我々はなぜか意味もなく船着場(コンバットゾーン)へ集まった。そしてセカンドクランの発足祝賀会と称した大虐殺大会を始めた。通りすがりの一般人も巻き込み、TI船着場は鮮血ほとばしる修羅場と化す。「pamuがガニマタで死んでるよ!」「♀ナイトの死に方ダセェ!」などとほざきながら楽しく死体の山を築き、セカンドクランの益々の発展を祈願した。しかしその1週間後に彼は引退、セカンドクランは事実上解散という悲惨な末路を辿り、伝説のウィザード「Maggy」と並び、玄人好みのネタとなった。
10月中旬、Yahoo発行の雑誌などでリニジが紹介されたことで接続者が爆発的に増えてきた。私がリニジを始めたころは最大でも500人程度、それからわずか2ヶ月弱で2000人を超えるようになり、ラグやサーバーダウンが頻発するようになった。ラグのせいで死んだり、ペットをロストするものが相次ぎ、私も愛犬の「つーか大陰唇」「つーか陰核」を失っていた。特につーか大陰唇は2chageに踏まれながら消滅という非業の死を遂げ、最後に残されたつーか小陰唇にも刻一刻と魔の手が伸びていた。
ジョカがGM2から呼ばれた(詳細はジョカサイト参照)際に、つーかマソコ及びつーか小陰唇の今後の処遇を尋ねてくれた。つーかマソコについては後日名前を変更するという以前GM3が言ったものと同じ回答が得られた。しかしつーか小陰唇については削除するという非常にショッキングな回答が返ってきた。私がアデンの地に足を踏み入れてからずっと私と行動をともにし、つらい時も悲しい時も一緒に乗り越えてきた、私の体の一部とも言えるつーか小陰唇がこの世界から抹消されてしまう。消されるくらいなら野生へ帰そう、私は一大決心をした。
つーか小陰唇を解放するために、犬屋の聖地TIへ向かうことをクラン員に告げると、私たちも最後のお別れをしたいという数名の慈悲深いクラン員が集まってくれた。彼らとともに犬小屋の近くの森へ入ると、私はつーか小陰唇に今までの感謝の気持ちを込めてグリーンポーションをたっぷりと飲ませた。クラン員もつーか小陰唇の新しい人生(犬生)の門出を祝し、エンチャント魔法をたくさんかけてくれた。そして私が解放ボタンを押すとつーか小陰唇はただのドーベルマンとなった。
「ただのドーベルマン」とはいってもフルエンチャントされたレベル30のモンスター。テイムしようと殴りかかってきた低レベルの犬屋をあっさりかみ殺すと、次の獲物を求め周囲を徘徊する。タイマンでは勝てないと踏んだ犬屋連合が数人でたこ殴りにするも、動物をこよなく愛するJAらうんじメンバーがヒールをかけるためなかなか死なない。死んだとしても動物愛護の精神で即復活スクロールを使い、再び戦場へ送り出す。その姿はまさに鬼畜そのものだった。かれこれ10人ほど手にかけたところでバトルサイボーグは森の中へと消えていった。
気がつくと皆強くなっていた。高レベルのメンバーはすでに蟻穴やドラゴンバレー(以下DV)など強敵がウヨウヨいる狩場へ移動し、クランチャットはレアアイテム入手報告で溢れかえっていた。私は相変わらず「金が全ての世の中じゃねえ」と自分に言い聞かせながら、WB周辺でジャイアントアントやリザードマンをシコシコ倒していた。
DVCツアーなどで大金を手にした一部のメンバーから「アジトを買おう」という意見が出てきた。アジトを持てば血盟員が顔を合わせる機会も多くなり、宿屋を借りる必要もなくなるというメリットがある。しかし死んだときや帰還スクロールを使用したときに強制的にギランへ運ばれてしまうというデメリットもある。DVをメイン狩場にしている人、祝福されたテレポートスクロール(以下b-tele)を自分で調達できる人にとってアジトは非常に都合のいいものだろうが、JAには低レベルの人間もいる。果たして今の状況でアジトを買うべきなのだろうか、いろいろ悩んだ挙句、高レベルの者が低レベルの者のb-teleを工面するという申し出もあり、アジト購入を決意した。
ギランの競売掲示板を覗くと、倉庫までは遠いが武器屋のすぐ近くという物件が格安で売りに出されていた。早速クラン資金を使って入札すると。TeamKATANA血盟がさらに高額で入札してきた。クラン員からは「そんな奴は無視して入札続けろマソコ!」とありがたいお言葉をいただき、TeamKATANA血盟と熾烈な入札争いを繰り広げた。
しばらく競っているとTeamKATANA血盟の盟主相沢祐一なる人物からウィスパーが来た。あの物件は我々のものだから入札するなという、まったくもって自己中心的な内容だった。さすがMMO、おかしな連中が集まるものだと感心しつつも彼の話を聞いていると、「あの物件は元々KATANA血盟所有だったが新しくTeamKATANAという血盟を作成したのでこっちに譲渡するために競売に出した、お願いだからこれ以上競らないで欲しい」と泣きついてきた。この話を聞き哀れんだ我々はそれ以上入札することをやめ、この物件を彼らに譲り、新たな物件を探し始めた。
この当時はまだ比較的アジトの売りも多く値段も78間でせいぜい1M程度。アジトを買えるほど裕福なクランは少なかったのでアジトなんてすぐに買えるものだと気楽に考えていた。しかし競売は終了間際が勝負。入札しても制限時間ギリギリで手痛いしっぺ返しをくらう毎日。とにかくアジトに住みたかった我々は買えそうな物件は手当たり次第入札していった。そして何軒目の入札だっただろうか、11月初頭、ついに我々もアジトを持つことができた。ギラン上の犬小屋から目の前の78間、道具屋や倉庫から遠く不便な場所であることは否めないが、通行人が少ないため非常に静かで居心地がよく、犬小屋が近いことから、私を含む犬を連れての狩りをメインにしていた連中には都合のいい場所だった。
アジトを手に入れた数日後、早速私にとって非常に大切な思い出がひとつできた。クラン員がやたらとアジトへ来いとせがむ。その必死さに何か面倒なことが起こったのか、それとも罠かなどとネガティブな方向に考えが走る。シャワーを浴びてコロンを叩きアジトへ行くと、そこにはクラン員が集結していた。
「これよりつーかマソコ感謝祭を行います」
リニジという非現実的な空間の中で、回線の向こう側の顔も名前も知らない人達からまさかこのような素敵な現実が送られてくるとは、リニジを始めたころには考えたこともなかった。ただラウンジでリニジスレを見つけて始めただけ、ただ盟主のなり手がいなかったから盟主になっただけ、ただおもしろいからゲームを続けていただけの私のためにわざわざ感謝祭を開いていただき、その上当時は高級品だったオークウォリアーのアミュレットまでプレゼントしてくれた。
どおせおいらはヤクザな盟主 わかっちゃいるんだクラン員よ
いつかお前が喜ぶような 偉い盟主になりたくて
奮闘努力の甲斐もなく 今日も涙の
今日も涙のレベルダウン レベルダウン
(歌:渥美清)
プレゼントの値段云々よりも、感謝祭を開いてくれたということで私は胸がいっぱいになった。みんなに感謝の言葉を言いたかったがうまい言葉が見つからない。歓喜の涙でキーボードが見えない。「ありがとう」と打つのが精一杯だった。この場を借りて改めて当時集まってくれた諸氏にお礼を言いたい。余談ではあるがこのときはまだロウフルMAXならアイテムを落とさないということを知らなかったので、このオークアミュが実戦で使われるのは当分先のことになる。
無料CD-ROMを全国のパソコンショップで配布したり、雑誌「ネットランナー」を利用したり、涙ぐましい努力でテスターを増やしていったNCJ。しかしあまりにも接続者が増えたためJP1サーバは満員御礼、急遽JP2サーバ(現在のカノープス)が設立されることになった。アジトを手に入れたばかりの我がJAらうんじはもちろんJP1に留まるのだが、そこに何かを求めた数名のクラン員は裸一貫で新天地へと旅立っていった。JP2で城主を目指そうとするジョカや、後に神聖L帝国の盟主となる(@゚Д゚)ことミツルもここでJP1を去ることになる。いささか寂しい気持ちがあったが、「新しいサーバでもラウンジ旋風を巻き起こせるようがんばってくれ」と願ったような願わなかったような気がする。
ラウンジャによるラウンジらしいリニジへのアプローチということで始まったラウンジリネージュ。ラウンジクランへの入団条件もラウンジャであれば何でもOKというスタンスをとっていたため、クランには様々な目標を持った人間が集まっていた。戦争したい派、戦争したくない派、石川はウンコしないよ派などがうまくバランスを保っていたが、ここにきてクランチャットやスレで戦争の話題が多くなってくる。
当時JP1は、OTを除く城は全てGangster血盟とその取り巻きどもによって構成された「極悪同盟」と呼ばれる軍団が支配していた。ギラン城はGangster血盟、ウィンダウッド城(以下WW)はSavedHeart血盟、ケント城はKUZUNOHA血盟。この3血盟ががっちりと手を組んでいたためにいずれの城も鉄壁の守りで、落とすことは不可能に近いと言われていた。私もこの3城は無理だと予測していたので、もし戦争する機会があったならOTにしようと考えていた。
戦争に参加したいというクラン員は少なからずいたが、JAはすでにアジトを持っていたためにクラン単位で戦争をすることは不可能だった。そこで戦争に参加したいクラン員たちは戦争時間中に限ってJAを抜け、フリーか他のクランの傭兵として戦争に参加していた。このときにゴレンジャイ血盟やLoveReplica血盟といった反極悪勢と知り合うことになる。そして彼らから言われた一言でJA史上最大のネタが生まれることになる。
「JAでWWを攻めてみないか」突然の呼びかけで少し動揺した後、少し冷静になって考えてみた。ある程度強さを手に入れたのならその強さを試してみたいと思うのは当然のことである。私もJAらうんじがどのくらいの強さなのか見てみたいという気持ちもあったし、あわよくば城主になって税収を横領して贅沢三昧をしたいという欲望もあった。しかしJAには。戦争による出費やレベルダウンを避けたい、戦争で遺恨を作り戦争以外の場所でいざこざが起こるのを避けたいという戦争反対派も存在する。アジトに関しても、せっかく手に入れたばかりなので手放したくなかった。
「全てはクラン会議で決める、回答はそれからだ」その旨を反極悪の連中に伝え、我々は宿屋のホールを借りて会議を始めた。嫌がらせやPKをされた場合どうするか、このままJAは戦争クランになるのか、アジトはどうするのか、石川はウンコするのかなど、話し合いは数時間に及んだがさすがラウンジ発祥クラン、祭という言葉には目がない連中の集まりということもあり、「JA最初で最後の祭にしよう」という前提で話は進んだ。
祭をするならご神体が必要ということで祀り上げるご神体を探していると、ネトゲ板のリニジスレにSavedHeart血盟盟主で当時WW城主であるアリスシアンのお絵かきサイトが晒されていた。そのサイトを見た瞬間我々は言葉を失った。
「愛って何デスカ」
そう書かれたそのイラストには、悲しげな瞳で何かを見つめる少女が描かれていた。ただし我々の想像をはるかに超えるレベルの美術力で描かれているために、本当に「悲しげな瞳で何かを見つめる少女」なのかどうかは分からないが、見るもの全てを凍りつかせるイラストであることだけは間違いなかった。
私があまりの酷さに肩を震わせ怯えているころ、ぴえとろの邪悪な思いつきにヒントを得た翠蓮は、密かに画像編集ソフトを起動させていた。あの少女のイラストをダウンロードし、手際よく無駄な部分を排除しつつサイズを16×12ピクセルに変換する。「ぜひこれを戦争用エンブレムに」と渡されたそのbmpファイルは後に「伝説のエンブレム」と呼ばれるこれ以上ないというほどの神々しいご神体であった。
翌日、ぴえとろと翠蓮を引きつれ同盟クランとの首脳会議に参加する。JA最初で最後の戦争であること、防衛はせずに他クランに譲渡すること、税収は全額同盟クラン及びフリーの協力者に渡すことなどクラン会議で決定した事項を一通り説明し、最後にアレの了承を得るためにエンブレムを変えて彼らに見せた。このエンブレムをつけてネカマ禁止と叫びながら攻めたいと告げると、「快く」なのかどうかは分からないが全員承諾してくれた。これで全てのハードルは取り払われ、あとは実行のみとなった。
運命の11月21日、集合場所に指定したTI訓練場にはかなりの人数が集まっていた。さらに盛り上げるために全体チャットで傭兵を募集してみると、ネカマを絶対に許さないという強い意志を持った勇者が次々と現れる。敵側の人間も視察に来ていたが、どうせバレバレの作戦なので構わずJoin作業を進めていると、突然アクシデントが起こった。ブラックホール(そのマスへ移動するとリニジが強制終了されてしまうというこの時期に頻発した恐ろしいバグ)が発生し、集まってくれた猛者共が次々とブラックホールに飲み込まれている。作戦開始早々暗雲が立ち込めたがそこはラウンジャ、どうせ筒抜けの作戦なのだから相手の目の前で集合しようというとんちのきいた発想で、集合場所は急遽WW前にあるぶどう園に変更した。
大多数がぶどう園に集合したところで我々は今回の作戦「ネカマ討伐戦」についての説明をした。全員のタイトルを「ネカマ禁止ー!」、エンブレムは例のアレに統一し、ワッショイワッショイ言いながら攻めるだけという、いたってシンプルで馬鹿げた作戦だが、集まってくれた2ちゃんねらーたちのツボに嵌ったらしく、エンブレムを変えたとたんに歓声と爆笑が巻き起こる。タイミングを見計らって突撃ラッパ代わりに宣戦布告すると、半狂乱状態の猛者共が一斉にWW城へ向けて歩き出した。
戦争ゾーンの中に入ってもそのテンションは上がる一方だった。「ワショーイ!」「ネカマ氏ね!!」など勇ましい遺言を残し、神風特攻隊のごとく次々と門へ突っ込んでいく。妙に高いテンションのおかげで誰も死ぬことを躊躇しない。むしろ死ぬことを楽しんでいるようにさえ見えた。これならいけると確信した私はゾーンの外で待機し、たまにゾーンの中に入っては「モウチョイヨーガンバッテー」、「ジャンジャンバリバリツッコンデー」などと労いの言葉をかけ再びゾーン外に出るというアウトボクシングスタイルに徹した。これは盟主が死んではならないという戦争の鉄則を守りつつ自軍の士気を高めるという高尚なテクニックであって、決してびびっていたわけではない。
私のヒット&アウェイ作戦が功を奏し、士気を高めた戦士がちらほらと城門を突破し始める。その報告を受け、私も急いで門をくぐり抜け塔へ向かった。城門前とは打って変わって城内は閑散としていた。ところどころ小競り合いがあったが私の歩みを止めるものはなく、すんなりと塔にたどり着くことができた。ここからどうしていいのかが分からなかったがとりあえず塔をポコポコ殴ってみると突然ワープ、モニタには頭上に王冠を乗せたつーかマソコが映し出されていた。城内では「キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━
!!」「ワショーイ!」などと歓声が上がっていたが、戦争時間はまだ20分ほど残されており、感極まっている暇はなかった。指揮官らしく見せるために「準備デキタラ門行ッテクダサーイ」とクラン員に一声かけて、私も門へ移動した。
門にはすでにやる気マンマンのネカマ討伐隊が防衛線を張り、ネカマの逆襲に備えていた。相変わらずハイテンションで敵の姿が見えるや否や「カエレ!」と口撃し、相手の戦意を削いでいった。指揮系統が完全に狂ったネカマ軍にはもう反撃する力はほとんど残されておらず、単発で門へ突撃してくる程度。門を守るナイトたちもすでに勝利を確信し、ワッショイワッショイのお祭騒ぎ。手持ち無沙汰だった私も攻撃の届かない後ろのほうから「マダ油断シナイデクダサーイ」などと叫びながら日没になるのを待っていた。
ダラダラ待つこと数分、ついに決着の時を迎えた。全体チャットにJAらうんじ勝利の文字が流れると、城門付近で戦っていた猛者共が奇声を上げながら城内に集合した。私も大仕事をやり遂げた充実感に浸っていると誰からともなくマソココールが巻き起こり、彼らに輪姦されるがごとくWW城のベランダへと担げ上げられ、勝利宣言をさせられることになった。ベランダから見下ろすとそこはまさに地獄絵図、午前0時を回っているにも関わらず同盟軍全員城内に集合しマンコマンコの大合唱が響き渡り、ネカマ軍を倒したついでに勢いあまってGM軍にも喧嘩を売っているようにも見えた。
私が感謝の弁を述べ始めると祭はクライマックスに達した。あまりにもうるさいので黙らせようとしたがうっかり空腹度が0になっていて叫べないアクシデントが発生。赤恥を晒しつつ側にいた部下からパンを恵んでもらい再び演説を始めた。演説といってもそれほど立派なものではない。感激のあまり言葉が思いつかず幼稚な演説だったと思うが、無我夢中だったため今となっては何を言っていたか思い出すこともできない。しかし集まってくれた人たちに対する私なりの精一杯の感謝の気持ちだったことは言うまでもない。最後にアントニオ猪木氏を真似て「1,2,3、ダー」で締め、JAらうんじ史上最大の祭は終わったかに見えた。
裏では祭はまだ続いていた。興奮冷めやらぬまま城内を探索する者、WW城の兵士を引き連れて練り歩く者、チャット禁止処分を受けてしまって黙って立ち尽くす者、皆それぞれ初めての城主を楽しんでいる時のことだった。突然私のところに今回の作戦に参加してくれたCutieArchers血盟盟主のCapellaから、「アリスシアンが来ています。至急城門へ御越しください。」というウィスパーが来た。急いで城門前へ向かうと、スケルトンに変身したアリスシアンが私に切りかかってきた。幸い周りにいたCapellaらの協力によりすぐに追い払うことができた。城門を守る近衛兵の死体を見て大体のことは想像できたが、今までここでどんなことがあったのかCapellaに尋ねてみた。
「アリスシアンは今回の同盟軍の攻撃を個人叩きと受け取ったらしく、許せないのでJAらうんじ、及びそれに加担した全てをPK対象とするらしい」Capellaは申し訳なさそうに私に語った。初めからそんなことは承知していた。クラン会議でも話し合い、クラン員全員覚悟はできていたので全く気にならなかった。ただひとつだけ、アリスシアンに誤解を与えたことだけが残念で仕方なかった。彼(彼女)を憎んでいたから今回の作戦に踏み切ったわけではない、「アリスシアン」という素敵なキャラクターを愛しているからこその作戦だった。その真意が伝わらなかったことは実に悲しい。
この数日前に偶然SKTで出会ったとき、初対面にも関わらず気さくに話し
かけてくれて、城主の大変さを語ってくれたアリスシアン。
近衛兵を切っているのを発見したクラン員が「なぜそんなことをするんだ」
と問いかけたところ、「だって、悲しかったんですもの!」という通好みの
萌え台詞を吐き捨ててくれたアリスシアン。
直接私へではなくCapellaを通して文句を言ってくる恥ずかしがり屋さんの
アリスシアン。
忘れません!
(朗読:原辰徳)
JAらうんじ結成当時は城主になれるなんて夢にも思ってもいなかった。ネトゲ板でも「ラウンジごときに城が取れるはずがない」というのが定説で、私の渋いキャラクター名のことも含めいつも笑いものにされてきた。「しかし今この城の城主は私なのだよカッカッカ」そんな優越感に浸りながら、静けさを取り戻したWW城を歩いて回っていたときのことである。城の片隅でアデナを並べているEternalClaraの姿が目に止まった。彼は戦争反対派で、戦争中はJAから脱退していた。今回の戦争で反対派の人たちには多大な迷惑をかけた手前、一言謝っておこうと思い、彼の側へ近づいた。
あ、やっちゃった!
突然リニジが強制終了、再びログインしても即終了される。これがブラックホールだと気づくのにそれほど時間はかからなかった。急遽新しく作成したキャラクターでWW城へと向かい、EternalClaraにこのことを告げると、彼はそこにブラックホールがあると知っていて、アデナで線を引き「ここより先は危険です」ということを皆に知らせたかったらしい。しかし彼のの努力は実らず、この後さらに何人もブラックホールにはまってしまう。GMに対処していただきなんとか復活することができたが、結局ネトゲ板で笑いものにされるというオチがついた。
誰が言ったか知らないが「遠足は家に着くまでが遠足」という名言がある。今回の戦争に当てはめると、WW城を同盟軍のいずれかの血盟に譲渡し、再び元のアジトに戻らなければ終結宣言を発することはできない。ということで再び同盟軍首脳陣による会議が開かれ、今回の譲渡先や作戦についての話し合いが行われた。譲渡先はゴレンジャイ血盟、あえて敵に城を取らせてからゴレンジャイ血盟が奪い返す。普通に防衛しても飽きっぽいラウンジャでは士気が上がらないだろうと見越した優秀な作戦だった。
防衛戦当日、戦争開始の合図とともに作戦が動き出した。同盟軍であるPinkAngel血盟の桃姫にまず城を取らせ、その間に他の同盟軍はぶどう園に集合し、今回の主役となるゴレンジャイ血盟に勢力を結集させた。JAのほうは遊撃部隊として、全体チャットで呼びかけて集まってもらったフリーの人たちを詰め込んだ。
忙しなくJOIN作業をしている最中にGangster2血盟がWW城を取ったというメッセージが流れる。Gangster2血盟というのは文字通りGangster血盟の2軍で、SavedHeart血盟とは同盟関係である。一部のうっかりさんはこの時点でJAらうんじがWW城を放棄したと思ったようだ。しかし我々はこちらの思惑通りに動いてくれたGangster2血盟に乾杯しながら突撃するタイミングを計っていた。
そして出撃の時を迎える。前回同様テンションを上げて徒歩でWW城へ向かい、エルフは隊列を組んで門を守るナイトを集中砲火、ナイトやwizはピカピカ光りながら門へ特攻する。盟主の私はというと、今回は死んでも何ら支障はないので積極的に戦闘に加わった。ナイト同士が斬りあっているところを見つけては、味方のナイトを盾に射程の長いエルフの槍で後方から突っつく。ガンダムほど近接攻撃に長けてなく、ガンタンクほど長距離攻撃もできない、いわばガンキャノンの役割である。ただ敵を殴っているだけでは盟主らしくないのでたまに「見学ノ方モー少シ下ガッテクダサーイ」と叫び、必死に戦っている部下たちへの思いやりを見せる。この辺の配慮はカイ・シデンには不可能だろう。
私の地道な努力が実を結び、間もなくゴレンジャイ血盟が勝利したというメッセージが流れる。ここまでは至って順調に作戦通り進むことができたがここからが正念場である。まだ戦争時間は30分ほど残されており、日没まで城を防衛しなくてはならない。飽きっぽい人間が30分間集中力を切らさずに城門前に立っていることができるのだろうか。そんなネガティブ思考で慌しく防衛配置につくと、早速敵襲がワラワラと押し寄せてくる。前回のように散発ではなく、統率の取れた波状攻撃。2軍とは言えGangster、やはり戦争慣れしている。そこにKUZUNOHA血盟やピンコダチ血盟などが助太刀しているわけだからそりゃ強い。予想していたこととはいえ極度の苦戦を余儀なくされた。
幾度となく訪れた危機に耐えついに日没を迎えた。相手が強大であればあるほど、立ちはだかる障害が大きければ大きいほど、それを乗り越えたときの喜びは大きくなる。今回の譲渡作戦の成功は、前回の勝利よりもはるかに大きな喜びを与えてくれた価値のある勝利だった。心地よい充実感に包まれながら、JAらうんじ史上最も長く忙しい2日間は幕を閉じた。
盟主の私にはまだ大事な仕事が残っていた。ひとつめは今回協力してくれた人たちへ給与を支払うこと。JAらうんじがWW城を治めていた2日間で集まった税収は約2M。これをJAらうんじ以外の全参加者の人数で割れば一人いくら渡せばよいのかはっきりするのだがいかんせん、人数を数えるのを忘れていた。仕方ないので「50人」と仮定して一人40k渡すことにした。同盟軍の参加者には盟主から参戦人数を報告してもらい、人数分のアデナを渡してそれぞれのクランで分配してもらい、個人で参加してくれた人にはスレや全体チャットで呼びかけて私のところまで取りに来てもらった。少し多めに見積もり、余った税収をこっそり着服するつもりで「50人」という数字を出したのだが、最終的には税収だけでは足りず、3人分自腹を切る羽目になった。
もうひとつの仕事は「競売期間中にキャンセルすれば戻ってくる」というデマに踊らされ、楽観的な気持ちで手放してしまったアジトを再び落札すること。先に述べたように「遠足は家に着くまでが遠足」、アジトを買い戻さねば我々の戦争は終わらない。ありったけのアデナを握り締め、意気揚々と競売掲示板へ足を運ぶとそこには恐るべき真実が待ち受けていた。「出品者は入札に参加できない」この仕様に我々はショックを受けた。このアジトはもうだめかとあきらめかけたとき、スレで一筋の光明が見出された。
「誰か信用できる盟主に資金を渡して一度落札してもらい、再び競売に出してもらう」という危険な賭けだった。2回入札しなければならず、最悪の場合クラン資金失う恐れもある。大金を託すことのできる信用できる盟主は誰か、やはり先のWW戦で協力してくれた血盟の中から選ぶしかないだろうということで、PinkAngel血盟の桃姫、通称顔文字女王に協力を要請した。その明るさと正直さで、誰がどう見ても悪人には見えない彼女に事情を全て話したところ、快く引き受けてくれた。資金を全て渡しドキドキしながら見守っていると、彼女は見事に使命を完遂してくれた。
それから1週間の野宿生活を経て、ついに入札締め切りの日を迎えた。ここで落とせなければ今までの苦労が水の泡になってしまう。クラン員の期待を背負い私は競売掲示板の前に立った。相手と思われる盟主はどこの馬の骨とも知れないプリンセス。すでに勝負は見えていたが「ライオンがうさぎを狩る時のように、だれが相手でも思い切り叩き潰す」という魔裟斗氏の格言に従い、馬の骨を精神的に追い込むことにした。
あえて馬の骨に聞こえるようノーマルチャットでクラン員と話し、「2Mくらいなら余裕で出せるな」「あと1M用意できるよ」などとハッタリをかます。その甲斐あってか馬の骨は、「この物件にそんな大金出す価値ないな」と捨て台詞を残しその場を去っていった。後に判明するのだがこの馬の骨はクランサイトを持っており、余程悔しかったのだろう、そこの日記にはJAに対する文句がタラタラ書いてあった。
それから待つこと数分、締め切り時間を過ぎ鳩が落札成功の知らせを届けに来た。クラン員にそれを伝え、我々は一斉に帰還スクロールを使った。画面が切り替わると、当たり前ではあるがあの懐かしいアジトの中だった。わずか2週間追い出されただけであるにも関わらず懐かしさが感じられたのは、この2週間が今までにないほど濃いものだったからであろう。久しぶりのアジトに浮かれ喜ぶクラン員たちを尻目に私は桃姫と連絡を取った。この度のお礼を述べ、落札代金を返してもらった私はクラン員の了解を得たうえで、感謝の気持ちとして200kほど渡した。彼女はとても喜んでくれた。このとき口説いていればB、ひょっとしたらCまでさせてもらえたのではないかと思う。非常に惜しいことをしたと今更ながら後悔する。
アジトを使えるにも関わらず、なぜかアジト脇にある小屋に群がっている集団がある。「し∀らうんじ血盟」、創始者はれくす王子ことJAらうんじのナイトRex、メンバーは他にpamu、Fuyumikan、ぃぃ。活動内容は小屋の中でイチャイチャすること、入団するには男女ペアでなければならないという、それはもう鬼畜のような集団だった。野郎臭いアジトから見える彼らの言動はまさに破廉恥極まりない。混ざりたかった、混ざって一緒に淫欲に堕落したリニジライフを過ごしたかった。しかし「永遠のチェリーボーイ」の異名を持つ私にそんな相手はいるはずもなく、ただただ彼らの姿を悶々と見つめることしかできなかった。
どこからともなく湧き上がってくる悔しさを押さえるため、修羅のごとく狩りに没頭した。クラン員が多くログインしていたときはパーティーを組んで一攫千金を目指してDVCへ、単独の場合は蟻穴に篭もりひたすら蟻に怒りをぶつけていた。蟻穴へ狩りに行く目的はレベル上げ、資金稼ぎだけではない、蟻が落とす宝石類を集めるためでもあった。集めた宝石を女性プレイヤーに渡し、「マソコさんロマンチックね!」「マソコさん好きです抱いてください!」というテレビドラマさながらの展開を目論んでのことだった。ここから数ヶ月、宝石を集めては渡していた。ゲットした宝石の7割は女性に貢いでいたと思う。が結局このひたむきな努力は最後まで報われることはなかった。
TeamKATANA血盟に所属していたSickという女wizがJAに入団して来た。素性を尋ねると「18歳 女子高生 浦安在住」という、女日照りが続く私にとってなんともときめくステータスだった。助平心に火がつき、その日から連日必死なアプローチを始める。たまたま数週間前に東京モーターショウを見に行って、京葉線周辺のデートスポットを目にしていた私は「ディズニーランドでデートしませんか」「葛西臨海公園の観覧車に一緒に乗りませんか」とご当地ネタで攻め続けた。彼女の反応も割りと良く、これはひょっとしたらひょっとするのではないかと思った。しかし2月に行われるJAらうんじオフ会で実際に対面するのだが、2mはあろうかという大男が「こんばんは、Sickです」と言って現れたときには口からエクトプラズムが飛び出た。こうして小さな恋は終わった。
暮れも差し迫るころ、アジトでのんびりと過ごしていると全体チャットで「葉鍵ギラン闘技場前に集合」という文章が流れた。「葉鍵」というのは簡潔に言えばコアなファンが多数いることで有名なアダルトゲーム製作会社のことで、正確には「Leaf」「Key」の2社を指す。コアなエロゲマニアによる負のエネルギー全開の集会に興味を持った私とぱむは、エロゲの知識がないにも関わらずそこへ行ってみることにした。ギラン闘技場前まで徒歩で30秒、そこには7,8人はいただろうか、異臭を放ちながらエロゲマニアが親睦を深めていた。それを見ながら「ウワァキモイネー」とウィスパーで話していると、予期せぬ事態が起こってしまう。
たまたまタイトルが「恋する鍵っ子」になっていた私を見たエロゲマニアが「マソコさんは鍵派ですか」と声をかけてきた。本来「鍵っ子」という言葉は、「両親が共働きで日中留守なため、自分でドアを開けて入れるよう常に鍵を持たされている子供」のことである。もちろん私もその意味で鍵っ子という言葉を使っていた。しかし彼らの中での鍵っ子というのは「Keyのゲームのファン」という意味らしい。すっかり同志だと思われた私はなすすべもなく彼らの輪の中に引きずり込まれ、全く興味のない話を延々と聞かされた。結局あまりの退屈さに耐え切れず、帰還スクロールを使って逃げるようにその場を去り、当分の間葉鍵という言葉を使わないと心に誓った。
12月初頭にハイネが実装され新しいマップ、新しいモンスターがモリモリ追加された。それに浮かれ騒ぐクラン員によってJAアジトにはドッペルゲンガーが頻繁に引きずり込まれていた。最初のうちはゲラゲラ笑っていたが、実装から1ヶ月も経ったこの時期には誰しもが見飽きて、更なる刺激を求めるようになっていた。そこで目をつけられたのがハイネガードだった。他の城のガードとは違い強烈な遠距離攻撃をしてくるハイネガードを、アジトへ誘導するのは至難の業である。アジトに誘導する際も誘導後も、何人ものクラン員が奴の遠距離攻撃に苦汁を嘗めた。レベル45になったばかりの私も奴の手によってレベル44に落とされた。
この恨み晴らさでおくべきかとハイネガード討伐隊を緊急徴兵した。JAらうんじだけではなくMicrosoft血盟からも有志が集まった。ナイトはフルエンチャント状態で奴を囲み、wizは魔法の詠唱速度を速めるためにガーストに変身、エルフも奴を囲むように隊列を組み、弓を構えて攻撃合図を待った。まさに本気モードだった。5,4,3,2,1とカウントダウンが進み、0になった瞬間奴の一番大切なところをめがけて一斉に攻撃。すると奴の体は1秒も持たずに崩れ去った。あまりのあっけなさに物足りなささえ感じるほどの幕切れだったが、今思えばあのアジトでの最後のビッグイベントだった。
何度か様子見程度に探索はしたが、個人的にあまり必要性を感じなかったのでそれほど近づくことがなかったハイネ。街のすぐ近くにある「ワニ島」と呼ばれるところでは、私の知らないうちに「ワニは島の端に沸くので島の端を歩いてはいけない」「自分をターゲットしたワニ以外切りかかってはいけない」という不愉快極まりないローカルルールが暗黙の了解としてまかり通っていた。それを知らずにワニ狩りに出かけていたBlackWidowが島の常連から文句を言われ、腹を立てながらアジトへ帰ってきた。彼の話を聞き、これはおいしいネタだと思った我々は大至急ワニ島へと向かった。
ワニ島は噂通り規律正しいところだった。ご丁寧に中央に固まり画面端からやってくるワニをずっと見つめ続け、自分に襲い掛かってきたら倒すというまさに共産主義の島。元々ローカルルールというものに疑問を持っていた我々は早速この島を正しい方向へ導くことにした。サモンモンスターを覚えている者は呼べる限りモンスターを呼び、島を縦横無尽に練り歩いた後に解放。その他の者は島を端を走り回り、ワニを排除しつつパインワンドを振る。
我々の献身的な活動のおかげで次々と常連が消えていったが、一人だけ何かに取り憑かれたかのようにずっと島に残っている愚か者がいた。ワニ島のボス、クロコダイルを待つ者である。きっとレアアイテムを狙っていたのだろう、突然クロコダイルが現れると愚か者は必死に殴っていた。もう少しで倒せそうなそのとき、ぱむがクロコダイルにかけたテイミングモンスターが見事に成功してしまう。クロコダイルはぱむの下僕となり、愚か者ナイトはなす術もなく消えていった。誰もいなくなったワニ島には我々の勝利の叫びが響き渡った。
不幸はいつも突然訪れる。この日もそうだった。アジトでダラダラと過ごしていると【GM】valasから非常に不愉快なウィスパーが来た。
「不適切なキャラクター名なので削除します」
そんな馬鹿な、名前問題はすでにJapanGM3との対談で10月に解決済みのはずだ。「削除します」ではなく「名前変更します」の間違いではないのか。ギャグか、ギャグなのか?
会議にかけなかったのか、それとも会議にかける前にクビになってしまったのか、JapanGM3と交わした約束が上層部には全く伝わっていないか無視されていたようだった。「今はβテスト期間だから貴様らをのさばらせているだけで、もうすぐ正式サービスが始まるので削除させてもらう」というのがNCJの方針のようだ。笑えない話である。削除するつもりならなぜ10月の段階でそう言わなかったのか。レベル45まで育てたキャラをそう簡単に消されてなるものかと、私も【GM】valasを問い詰めることにした。
「JapanGM3との約束はどうなったのですか?私は彼の言葉を信じ今までβテストに貢献して参りました」と情に訴えかけると、【GM】valasは上層部と話をしてくるのでしばし待たれよと言い残し、数分の沈黙の後再びウィスパーを送ってきた。返ってきた答えは「この件は会社会議にかけるのでまた後日連絡する」とのこと。大の大人がスーツにネクタイ締めてマソコマソコ言う会議室の光景を想像して思わず吹いてしまったが、どうせもうすぐ正式サービスが始まるし、キャラも削除処分になるだろうから引退するにはちょうどいい機会だとあまり期待せずに待っていた。
その数日後、NCJから一通のメールが届く。1月31日までに申し出れば名前変更を承るという内容のものだった。「人は分かり合えるんだ」というアムロ・レイの言葉が脳裏にこだました。このメールをもらい、名前を変更した人は私以外にも多数いるだろう。名前変更で生き延びることができたそこのあなた、あなたが今リニジをできるのは私の涙ぐましい努力のおかげである。このことを肝に銘じ、今後私のことを神と崇めよ。
崇拝しない者は悪人であり、唯一神つーかマソコが
地獄の業火に投げ込む者だ。
(朗読:又吉イエス)
2月1日、私は新宿の地に立っていた。刺せば監獄刺されば地獄の腐った町に赴いた理由は、第一回JAらうんじオフ会に出席し、新宿uri-netというネットカフェを占拠するためだった。ひょっとしたら女性クラン員の誰かとHできるかもしれないという淡い期待を抱いていたのも参加理由のひとつであることは否めない。今はもうなくなってしまったようで知らない人もいるだろうが、uri-netというのはGangster血盟盟主Yongleeが経営するネットカフェで、Gangster血盟員以外にも古参プレイヤーが多く訪れるリニジの聖地とも呼べるところだった。密かに私はそこを巡礼したついでに、古参プレイヤーから高額アイテムを恵んでもらおうという不純な野望も持っていた。
このオフ会には呼んだ覚えのないMicrosoft血盟の者も含め、20名以上集まった。居酒屋で景気をつけた後、街の片隅にある雑居ビルの地下の固く閉ざされた扉を開けた。薄暗い店内には客の姿はほとんど見えず、空しく有線放送の演歌が響いていた。すでにuri-netを利用したことがあり、店員と顔見知りになっていたMicrosoft血盟員により店長のYongleeを始め、KenrangやYoYoといったGangster幹部が紹介された。軽く挨拶を済ませた後、我々は席につきリニジをすることにした。
大人数で押しかけたためにパソコンが足りなってしまい、私はとりあえずパソコンの前には座らず休憩用と思われるソファーに腰を下ろし、気さくな店長が気を利かせて持ってきてくれたキムチやジュースをつつきながら席が空くのを待っていた。待ちすぎてうっかり寝てしまい、この日はほとんどリニジをすることはなく、雑談ばかりしてuri-netを後にした。
翌日も再びuri-netへと向かった。この日は前日よりも参加者は少なく、すんなりとパソコンを確保することができた。そしてリニジを起動すると、キャラクター名が「つーかマソコ」から「つーか信夫」に変わっていた。ひとつの歴史が幕を閉じたことに対する一抹の寂しさがあったが、新たなる旅立ちの場がリニジの聖地uri-netであったということに不思議な縁を感じた。ちなみになぜ「信夫」なのか不思議に思った人もいるだろう。信夫というのは私の父の名前であり、福島県にある信夫山とは全く関係がない。なぜ父の名前を使ったのかというと、それはただ単に歌舞伎役者や落語家を真似ただけで深い意味はない。
名前が変わって心機一転リニジを始めると、YongleeやKenrangが我々と遊びに来た。Kenrangとぃぃによるエース同士のデュエル、Yongleeのインビジリティークロークや変身コントロールリングを借りてのレアアイテム体験会、最終的にはJA、Gangster合同のDVCツアーも開催された。これにより我々とGangster血盟に妙な友情が生まれた。特にセクシー鬼嫁とYongleeに至ってはペットの犬を殴り合うという変態プレイに走り、いつ性交渉が始まってもおかしくないほどの仲になっていた。馴れ合いは夜通し続き、疲れがピークに達したころに我々はそれぞれの家路についた。
オフを終えた後は、正式サービスの開始が迫ってきたことから引退や、今後のスレの存続について議論が活発になっていた。「最近のJAらうんじは普通のクランに成り下がった」だの「βテストが終わる前に何かイベントを」といった声が多く、我々も何かをしなくてはという使命感に燃えていた。そんな時にセクシー鬼嫁の裏の顔、ラウンジ過激団の盟主ハメ子が城を取ろうと言い出した。かつてラウンジ過激団は、盟主ハメ子とエルフのうっかり妊婦の2人だけでケント城城主であるKUZUNOHA血盟を、後一歩のところまで追い詰めたほどの鋭いクランだった。その過激団の盟主が城を取りたいと言うのなら我々も動かざるを得ない。やはりリニジの最大の魅力は戦争であり、大人数が参加できて最高の思い出を作れるものは戦争しかないだろうということで、ラウンジ過激団による祭が静かに動き出した。
今回はあくまでラウンジャによる祭なので他クランに協力は求めずスレで協力者を募り、ラウンジを愛してやまない人達だけを集めて攻めようということになった。連合軍だと我々の思うように動けないというのも理由のひとつで、以前WW城を落とした際にひとつだけ実行できずに悔やんだもの、「税率50%」「税収全額着服」を実現するためでもあった。
すでに落としたことのあるWW城を攻めるのはおもしろくないということで却下。ケント城はラグが発生しやすく落としにくいということで却下。つい最近世話になったばかりのYongleeが城主を務めるギラン城を攻めるのは忍びないということで却下され、目標はハイネ城に決まった。決行日や集合場所などをスレに書き、準備は万端かに思われた。そして戦争当日、戦争開始時間まであと6時間を切ったそのときに事件は起こった。スレには今日ハイネは戦争日ではないぞと書き込まれている。調べてみるとギラン、ケント、WWは今日、ハイネは明日が戦争日だった。
やっちゃった!
戦争日を間違えるというとんでもない大チョンボをしてしまい、攻める城を変えてこのまま強行するか、明日に日程を変更するかを急遽話し合わねばならなくなった。どうしてもハイネにこだわるなら1日ずらさなければならないが他の3城なら今日攻めることができる。1日ずらすということは今日のためにスケジュールを空けてくれた人たちに申し訳ないので、このままどこか他の城を攻めようということになり、「どうせ攻めるならでかいところがいい」ということで、目標はGangster血盟所有のギラン城へと変わった。ただハイネを攻めるよりも「つい先日世話になったばかりの人たちに刃を向ける」、こっちのほうがネタとしてはおいしい。このアクシデントが後に奇跡を起こすことになる。
戦争時間間近になったところで全体チャットでも協力を呼びかけた。もちろん公約の「税率50%」「税収全額着服」も全て伝えたので、笑いの分かる人だけ集まってくれればいいと期待せずに待っていると、予想以上に大勢の人が集まり、集合場所のTIグンダーの洞窟には溢れんばかりの人だかりができた。中にはすでに引退した人や、他のサーバへ移住した人たちの懐かしい顔もあり、今回のイベントがいかに期待されているかということがひしひしと伝わってきた。
エルフやナイトの主力メンバーは過激団に詰め込み、宣戦布告できないJAには遊撃部隊としてその他の参加者を詰め込む。私もWW戦のときより格段に強くなっていたので、ガンキャノンを卒業しガンダムになろうと、武器はエルフの槍ではなく刀を選択した。
リニジを始めたばかりのころは雲の上の存在だった最強集団Gangster血盟を相手にするということで、私は緊張すると共に闘志がメラメラ燃えていた。また、オフ会以来Gangster血盟に入団していた一部のJAクラン員が、Gangster側について参加するという裏切り行為もあり、余計にメラメラ燃えていた。その闘志とは裏腹にタイトルは全員「日韓友好」に変えた。タイトルを統一したのは敵味方の区別がしやすいという利点もあるが、Gangster血盟を憎んでいるから攻めるわけではないという意思表示でもあった。今思えばYongleeたちは漢字を読めたのかいささか疑問ではあるが。
戦争終了時間まであと1時間を切ったところで突撃を開始した。私の脳内には突撃ラッパが高らかに響き渡った。全員左門に集まり、一丸となって左門を集中攻撃。引退者や他サーバからの参加者は、何度も殺されながらもダイスダガーやコールライトニングワンドを使って必死に敵と戦っている。それに触発され私も自慢の+6刀を握り締め、ピストルマークめがけて単身切りかかった。3人ほどと交戦した後に1勝もしていないことに気づき、倉庫へエルフの槍を取りに行った。所詮ガンキャノンはガンキャノン、いくらがんばってもガンダムにはなれないと悟った。
程なくしてGangster側の人間と名乗るものからウィスパーが届く。「今日はGangsterの人数は少ない、左に戦力が集中しているので右門はガラガラだ」というにわかには信じられない内容だった。Gangster側に密告者がいたのには驚いたが、実際に偵察へ行った者からも右門は人が少ないという報告が入り、私は神に奇跡を感謝した。急遽攻める城を変更したのが功を奏したのか、間違いなく防衛の人数は普段より少ない。「災い転じて福となす」とはまさにこのことである。密告者からの情報は真実であると確信した私は手の空いているものは右門から攻めるようにと指示を出し、左は過激団に任せて私自身も右門へ飛んだ。
守りが手薄だった右門はあっという間に破壊された。それとシンクロするように左からも門突破の報告が入る。左門を守っていた者の一部が右門防衛のためにそこを離れ、うまいこと戦力が分散されたらしい。何はともあれ両門を突破できたことで戦場は中庭へと移った。塔を中心に隊列を組むGangster血盟員、これを排除し塔をハメ子に殴らせなければならない。敵味方問わず塔の周りに大集合してのボコスカウォーズだったので、ハメ子がどこにいたのかさえ分からなかった。残り時間10分をきったあたりで塔が倒され、我々はギランの町に飛ばされた。
ついにあのハメ子がやったのかと思いきや、チャット欄には私の全く知らない名前のクランが勝利したと流れた。あの馬鹿は変身していると塔を殴っても城主になれないことを知らずに変身したまま塔を殴っていて、どこかの盟主に横から奪われてしまったらしい。うかつだったが後悔している時間はない。気を取り直して再び戦場へと足を運んだ。ここからは時間との勝負だった。私の視線は時計とモニタを行ったり来たり、心の中では「早く来い馬鹿」と何度も言い続けていた。そして残り時間が5分をきったころ、再びハメ子が塔に到着すると同時に我々はギランの町へ飛ばされた。それから戦争時間はあっという間に終了し、今度こそ本当にリニジ史上最低の城主が誕生した。
ついにあのGangster血盟からギラン城を取ることができた。リニジにはドラゴンクエストのようなコンシューマゲームとは違い、最後に倒さねばならないボスのような存在がないので決してエンディングを迎えることはない。しかし私にとってはこの戦争が「ラストボスを倒した勇者様御一行」に見えてしまい、興奮を抑えることができなかった。恐らく他の参加者も同様に興奮していたのだろう、WW城での苦い経験を忘れ、「チンコ」「マンコ」「ハメ子」コールが響き渡る。鳴り止まない賞賛と罵声の中、城主ハメ子が「Gangsterのメンバーは全員粘着セクハラする」と力強く演説し、公約どおりギランの税率を50%に上げ、過激団は解散した。
その後JAアジトに戻り勝利の余韻に浸っていると、Yongleeが現れた。報復に来たのかと思ったら我々の勝利を祝いに来てくれたようで、非常に楽しい戦争だったと嬉しそうに言っていた。そしてPKや嫌がらせはしないと約束し、どこかへ去っていった。すがすがしい気分でこの日のリニジを終えた。
ギラン奪取から一夜明け、明日はバレンタインデー。浮世の馬鹿がチョコレートを食いながらセックスをする1年1度のスペシャルデーである。NCJも小生意気にバレンタインデーイベントとして、TIのパンドラという道具屋で期間限定アイテムとして、チョコレートと助平ったらしい便箋を販売していた。我々の恋人は「ネタ」だけだ、セックスしている暇があるなら笑いをとれということで、このイベントに便乗した壮大なネタを計画していた。このネタのためにギランを取ったといっても過言ではない。
ギランの税収を全て着服したのは、パインワンドの購入資金にするためである。バレンタインデー限定アイテムを買うためにパンドラのところに群がってくる愚か者たちを、パインワンドで死体の山に変えようというラウンジお得意のパイン祭。成功させるためにもたくさんのパインワンドが必要だった。購入資金を工面するために城を取ったわけだが、その時点で貯まっていた税収は約1Mだった。
ハメ子以外の誰もが予想していたことではあるが、税率50%の影響で物価が高騰し、誰もギランで買い物をしなくなり、我々が手にするはずだった税収が他の城に流れたのである。ギラン以外の城を持っていた盟主はさぞかし喜んだだろう。逆に税収を奪われたハメ子は焦り、急遽税率を10%に戻し「お買い物はギランでどうぞ」必死にアピールしていた。国宝級の馬鹿である。
1Mで1200チャージほどのパインワンドを買った我々は、バレンタインアイテム追加のメンテナンスが終了すると、一路TIへ向かった。パンドラの周りにはすでに、そこらの戦争よりも多いのではないかというほどの人だかりができていた。人が多ければ多いほど素敵なパーティーになる。予想以上に膨れ上がった群集を囲むように配置につくと、我々は力いっぱいパインワンドを振った。
まさに血塗られた聖夜、召喚されたモンスターがセーフティゾーンだと思って油断しているアンポンタンに容赦なく襲いかかった。悲鳴と罵声が響き渡り辺りは血の海。群集が小さくなっていくのを見届けた後、私はチョコレートを買って帰り、ハートを出して遊んだり、助平ったらしい便箋を送ったりしてバレンタインイベントを楽しんだ。
ギラン城防衛の日の朝、突然ぴえとろが今晩の戦争を最後に引退すると発表した。ラウンジクラン創設直後からクランを牽引し、ゲーム外でも性生活を暴露してスレを盛り上げたり、クランサイトを創設したりと、数々の功績を残してきたJAらうんじの顔ともいえる男の引退宣言は、誰もがにわかには信じることができなかった。彼の引退宣言は馬鹿城主ハメ子様の心も動かした。バレンタインパイン祭の成功で満足し、防衛する気はないと言っていたギラン城をぴえとろへ送る最後の感謝の気持ちとして、本気で防衛にすることになった。
ハメ子の本気防衛宣言により、我々は緊急会議を開いた。その場で本日の主役ぴえとろが「防衛だるいからギラン放棄して他の城を攻めよう」というナイスな提案をした。確かに防衛はすぐに飽きてだらけてしまう恐れがある。誰も攻めてこなかった場合は戦争すら起こらない。ちょうど都合のいいことにこの日は、まだラウンジが一度も落としたことがないケントが戦争予定日であり、SavedHeart血盟が攻めるという噂もあった。こんなにおいしい話はない。満場一致でケント攻めが決定した。ただし我々がケントを攻めることがばれてしまうと予期せぬアクシデントが起こることも考えられたため、この計画はごく一部の人間にしか伝えず、ほとんどの人はギラン防衛だと思い込んでいた。。
戦争時間が近くなるにつれ徐々にギランを防衛する気マンマンの協力者が集まってくる。一人のプレイヤーが引退するというだけで何十人も集まるというのは異例のことだろう。これも全てぴえとろの人徳の成せる業である。ケントでは噂通りSavedHeart血盟が戦争時間前から攻め込んでいるという情報も入ってきた。何もかもが思い通りに進み、ぴえとろ引退式にふさわしい舞台が整った。そして戦争開始時間、集まってくれた参加者に今回の趣旨を告げ、我々は一斉にケントへ飛んだ。誰もいないギラン城を見てGangsterもさぞかし驚いただろう。
守りやすい構造になっているケント城、高レベルのプレイヤーに門を守られたらなかなか突破することはできない。落とせる可能性があるのは時間前からの攻撃だけ、ただしこれをやると卑怯者の汚名を着せられる諸刃の剣、素人にはお勧めできない。この禁じ手が使われ、ケント城はすでにSavedHeart血盟が城主のKUZUNOHA血盟を倒して防衛の準備をしている最中という、これまたすばらしいタイミングだった。また相手はSavedHeart血盟、恐ろしいほどの腐れ縁を感じた。恐らく向こうもそう感じただろう、またネタにされるのだから。
あの日の興奮再びと、威勢良く突っ込むラウンジ一同。準備中とあってまだ門は完全には固められておらず、あっけなく城は陥落した。アリスシアンに感謝しながら今度はこちらが急いで防衛の準備をして敵の逆襲に備えた。ところが我々の人数の多さに臆したか敵はなかなか攻めて来ない。最も懸念していたグダグダモードに入ってしまった。ぴえとろの引退式なのにこれでは寂しすぎる、どうしたものかと思案していたところ、せっかく集まってもらったのに退屈させてはいけないと一人の男が立ち上がった。本日の主役ぴえとろである。
彼は引退するにあたって、自分の装備品を全てオーバーエンチャントすることを決めていた。それをこの場で見せて残り時間を繋ごうというのだ。「蒸発させるくらいなら何でもいいから1つくらいくれよ」と言いたかったがそんなことを言える雰囲気ではない。彼はひとつひとつ装備品にスクロールを張っていった。「+7完成!」「保護マント蒸発!」などと叫びながら彼の自虐ショーは続いた。観衆は皆悲鳴を上げながら彼を見守った。しかし彼の努力も空しく、残り時間を30分ほど残し装備は全て蒸発してしまった。「実は信夫にあげようと思ってTシャツだけ残しておいたんだよ」なんて嬉しい報告があるかと密かに期待していたが本当に全部蒸発させてしまったらしい。心の中に季節外れの木枯らしが吹いた。
グダグダモード全開の中、「またギラン攻めるか」と誰かがポツリと呟いた。我々が放棄した後のギラン城は予想通りGangster血盟が取っていた。残り時間はわずか20分、勝てる見込みはほとんどない。しかしこのままケントでダラダラしていても何も生まれない。ぴえとろのためにもここは行くしかないだろうという思い、私はGOサインを出した。せっかく落としたケントはもったいないので、ほとんど忘れかけていたし∀らうんじ血盟のれくす王子に取ってもらい、参加者は皆ギランへ飛んでいった。私は2,3人の物好きたちと共にケント城の門を守ることにした。門を守る盟主、後にも先にも私以外いないのではないだろうか。
それから20分後、戦争は終了した。きっとギランでは凄まじい戦闘が行われていただろう。結局落とすことはできなかったが皆楽しそうに戻ってきた。私が守っていたケント城も終了間際にどこぞの馬の骨共にあっさり落とされ、ラウンジはどの城も取ることができなかった。ギランでのぴえとろの最後の勇姿を見ることができなかったことが悔やまれるが、城を取れなかったことに対しての後悔は全くなかった。ぴえとろとの最後の祭なのだからこれでよかったと思う。
その後、アジト前に集まってくれたぴえとろファン全員に対し、ぴえとろから最後の言葉が贈られた。一人一人名前を呼びその人との思い出を語っていく、涙なくしては見られない光景だった。彼の言葉を一字一句逃すまいと私はスクリーンショットを何枚も撮った。
全員に別れの言葉を言い終えると彼は静かにログアウトしていった。私のリニジ生活の中でも忘れられない感動の一夜となった。がしかし、あれだけ感動的な別れをしたわずか5日後に「ANGRA」という名で戻ってきたときは気絶した。
前述したがあえてまた言いたい、不幸は突然やってくる。この日もそうだった。忙しい3日間を終え、いつも通りアジトでグダグダしていると、一羽の鳩が手紙を持ってきた。毎度おなじみの納税の催促状だった。たかが2000アデナ、いつでも払う準備くらいできている。忘れないうちにさっさと払ってしまおうとアジトのメイドに話しかけると、「あなたはこの家の主人ではないので命令は聞けません」と暴言を吐いてきた。ふざけるな、確かに今まで貴様には何もしてあげられなかったがそれでも言うことを聞いてくれたではないか。
何度払おうとしても受け付けてくれない。何度か繰り返しているうちにとんでもないことに気が付いた。私のキャラクターの名前は前述の通り「つーか信夫」に変更された。しかしアジトの所有者はいまだに「つーかマソコ」のままなのである。これはNCJがうっかりやってしまったバグなのだろうと思い、GMに報告してみた。どうやらGMもこのバグに気付いていなかったらしく、上司に聞きにいっていたのだろうか、しばらくの間回答が得られなかった。
どれくらい待たされただろう、戻ってきたGMの口から衝撃の一言が発せられた。
「仕様です」
私は目を疑った。このような仕様があっていいのだろうか。所有者でないから税金を払うことができず、競売に出すこともできない。その反面競売に参加することもできず、城主に宣戦布告することもできない。税金滞納で追い出されるのを待つだけの生殺し状態。どう考えてもバグであるにも関わらず、何度食い下がっても「仕様です」の一点張りで貫き通され、泣く泣くこのアジトはあきらめることにした。
アジトを追い出されるまでに何とか次のアジトの購入資金を貯めようと、我々は必死に資金作りを始めた。倉庫の肥やしを売りに出したりDVCツアーで高額アイテムを狙ったりと涙ぐましい努力の毎日。そんな中、落ち武者が蟻穴から楽しいニュースを運んできた。riryυというプリンスに因縁をつけられPKされたというのである。やられっぱなしというのもだらしない話なので、この馬鹿を見かけたら問答無用で殺ろうということになった。
それから数日間、riryυとの小競り合いは続いた。しかし帰還スクロールという便利な道具があるためになかなか決着はつかない。このままダラダラ続くのかと思われたある日、私がログインしていなかったときに戦況が動いた。たまたまDVでパーティーを組んで狩りをしていたクラン員がDVで奴を発見した。都合のいいことに奴はカオティック、パーティーには、JAらうんじのエース、というより殺人兵器ぃぃも含まれており、まさしく「やるなら今しかねぇ」状態だった。
それから数時間後に私がログインすると、そのときのパーティーメンバーからriryυ死亡報告とともに「こんなものをゲットしました」と+5パワーグローブが渡された。これを売りさばき、ありがたくアジト購入資金に使わせてもらうことにした。+5パワーグローブを落としたことがよほどショックだったのだろう、これ以来riryυの目撃情報は徐々に減っていた。
ついにアジトを追い出される日が来た。ひょっとしたら何かが起こるかもしれないと最後の最後までアジトに残っていたが、時間になると倉庫のところまで吹き飛ばされた。久しぶりの野宿生活に落胆するも、気を取り直して競売掲示板を覗くと、120間のアジトが売りに出されていた。今まで使っていた78間のアジトより高額な落札価格になるだろうが話し合いの結果、思い切って120間の物件を狙ってみようということになった。クラン員から託されたカンパとハメ子が隠し持っていたギランの税収の残りと+5パワーグローブの売却代金、これで10M近く集まった。その当時の相場から考えるとギリギリ買えるかどうかという額だったので、一撃必殺スナイプ入札はもちろんのこと、さらに確実に落札できるよう作戦を練った。
他の盟主が掲示板に近づけないようクラン員総出で掲示板を囲み、さらにサモナーは呼べるだけモンスターを呼んでその外側を囲む。しかし掲示板を見られる範囲はかなり広く、ちょっとやそっとの人数では全く効果がなかった。この作戦は失敗であると判断した我々は次の作戦として、DVからブラックエルダーを連行し、フルエンチャント&クリアポーション満載にして掲示板付近で暴れていただいた。ブラックエルダーの暴れっぷりは凄まじく、広場には次々とうっかり者の死体が積み重なった。その光景はアジト入札中であることを忘れさせてしまうほど爽快だった。しかしブラックエルダーの奮闘も空しくこの日のアジトの落札は失敗した。
それから数日後、クラン員のカンパでさらに軍資金を増やし、もう一軒売りに出されていた120間のアジトを何も工作せずに無事落札することができた。金が全ての世の中だと悟った。
新しいアジトはギランの下のほうの犬小屋の目の前、出入り口の側だったのでゴブリンやグレムリンがいつも寄ってくるのが難点だが武器屋や道具屋に近く、前のアジトより若干便利になった。新しいアジトに浮かれ喜ぶクラン員達によって最初に行われたことは、クラン員一人一人ステージに上がっての童貞喪失体験談発表会。120間という広さを全く生かしていない、いかにもラウンジらしいアジトの使い方である。こんな始まり方をしたせいか、この後もこのアジトからは様々なセクハラが行われた。
全体チャットで縦読み「マンコ」発言をしたり、インカ帝国初代皇帝についてGMと討論したりと、セクハラ度に一段と磨きがかかっていった。GMから「クランごと処分を課す」と脅迫されたこともあった。これはこれで面白かったのだが、本来のリニジの遊び方ではない楽しみ方に少し物足りなさを感じていた。刺激を求めてリニジを始めたはすなのに、ゲーム自体から刺激を受けることができない。とある女性クラン員に10k払ってマンコ画像を見せてもらったときは刺激的だったが、このころすでにリニジに対して飽きが始まっていた。
私のキャラクターはレベル48を超え、経験値を1%得るのにも多大な時間がかかるようになり、機械のように毎日黙々と蟻穴やOTで狩りを繰り返していた。そんな退屈なプレイをしていると、次第に「この先レベル50に達するにはあとどれくらいの時間がかかるだろう」「これ以上レベルを上げて何かあるのだろうか」という疑問が浮かんできた。そして「後は何をすべきだろう」と考えたとき、私のリニジに対する情熱は完全に冷めた。
クランは城を取れるほど大きくなった。ギランで一番大きなアジトも買った。アデン大陸は隅々まで見てまわった。キャラクターは充分に強くなった。貢いだ女性プレイヤーは皆逃げていった。もうこれ以上やることがないと気が付いたとき、半年間私の身代わりとなってアデンの大地を冒険してきた「つーか信夫」と「JAらうんじ血盟」を、信頼できるクラン員に託し、たくさんの思い出と共にアデンの地をを去った。こうして2002年3月、つーか信夫の中の人のリニジ生活はひっそりと幕を閉じた。
改めて文字にしてみると短く感じるがその内容は濃く、とても長かったように感じる半年間だった。この期間にリニジを通じて得たものは大きい。パソコンやインターネットに関する知識が身についたり、タイピングが早くなったり。中でも一番大きいのは仲間ができたことだろう。今はもうゲーム内で会うことはないが、メッセンジャーやBBSで繋がっている腐れ縁。この作品を書くきっかけになったのも、書くにあたって協力してくれたのもこの仲間たちである。リニジと出会っていなければ決して出会うことのなかった、遠くはなれた土地に住む愛すべき馬鹿共に感謝の意を述べて。
最後につーかマソコ(つーか信夫)を支えてくれた全てのリニジプレイヤー、そしてここまで読んでくれた二毛作ファンに感謝の気持ちを込めて
●⊂(゚∀゚ )ウンコセンキュゥー♪